2010年10月7日木曜日

秋の七草と家紋(その1 山上憶良版)

万葉集に山上憶良が詠んだ2首

「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびおり)
            かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
「萩が花 尾花 葛花 撫子の花 
             女郎花 また 藤袴 朝顔の花」

秀吉・江戸以降今日まで、「花見」と言えば桜と相場は決まっていましたが、

平安の時代には、貴族たちの花見は野に出でて秋に咲く花々を愛でるのが一般的だった様です。

万葉集にもたくさん詠まれている。
萩は141首、尾花は33首、葛は17首、撫子・石竹は26首、女郎花は14首、藤袴は1首、朝顔(今日の桔梗)は5首で
7草まとめると237首にもなります。

 ①萩について マメ科 和名「ハギ」 漢名「胡子花」


「萩」の名前の由来
古株から新芽がつぎつぎ萌え出でる状態の


「生え芽(ぎ)」がハギになった。

「萩」の字は秋咲くので、
草冠に秋と書く和製国字です。

「お萩」は元々は萩と栗を粉にして餅を作っていたそうです。





家紋について

束ね萩

抱き割り萩




②尾花について
 イネ科 和名「ススキ」 漢名「芒」 別名「尾花」


和名の「ススキ」は「すくすく立つ木」→ススキ


別名「尾花」は穂が狐の尾に似るから

十五夜にススキは付き物。
月神の依り代で1本だけ立てるのが正式



抱き芒


雪輪に芒







③葛について
 マメ科 和名「クズ」 漢名「葛」 別名「裏見草」


和名の由来:葛の産地:大和国の国栖(くずか)→クズに転訛

別名の由来:葉の裏が白く、風に翻ると白くちらちら見えるから女の恨み心に掛けている。
「秋風の 吹き裏返す 葛の葉の 恨みても猶恨めしき哉」
『古今集』平 貞文



家紋について
葛の花
使用家は青木氏、西尾氏(丹治氏流)
三つ割り葛の葉
使用家は久下氏、荒木氏(藤原氏流)


④撫子について
 ナデシコ科 和名「ナデシコ」 漢名「瞿麦」 

撫子
和名の由来:「撫ず」は「愛する」の意で、吾が子を撫でてやりたいような可憐な花から。
オランダナデシコはカーネーション。





家紋について

撫子
使用家は斉藤道三
(五弁のきざみが深いものを大和撫子)

石竹
使用家は斉藤氏、井上氏(藤原氏流 )
(五弁のきざみが浅いものは唐撫子
別名「石竹」)


⑤女郎花について
 オミナエシ科 和名「オミナエシ」 漢名「黄花龍芽」 別名「女郎花」

女郎花

和名の由来:
1)細長い茎の頂に粟粒ほどの黄色い花の様・形を上臈花→女郎花
2)オミナメシ(女飯)から女郎花
  一方 男飯→オトコエシ(白い飯は男が食べる)




家紋:無し


⑥藤袴 キク科 和名「フジバカマ」漢名「欄草」 別名「秋欄」

藤袴
和名の由来:花は淡紫色で藤色に似て筒状の花弁が袴に似ることから

万葉集には1首だけ
遣唐使として渡った山上憶良のハイカラ思想が選定の基準になった




家紋:無し



⑦朝顔について
 キキョウ科 和名「キキョウ」 漢名「桔梗」 別名「阿利乃比布岐(蟻の火吹き)」 古名「オカトトキ」


キキョウ
万葉集の朝顔は薬用としての「牽牛子」であり、現在の「朝顔」を遣唐使が持ち帰る以前のもの


古名の由来:岡に咲く神草トトキ即ちキキョウ
   <参考>トキの咲くところ=地名の土岐
別名の由来:「蟻の火吹き」青紫の花に含まれているアントシアニン色素は細胞液が酸性になると赤に変色する。
もし蟻が花を噛んだら蟻酸の作用で赤くなるかもしれない


家紋について

桔梗
水色の土岐桔梗は
明智光秀の紋で有名


植村桔梗
別名「一文字三つ剣」



番外①朝顔  ヒルガオ科
      和名「アサガオ」 漢名「牽牛子」 別名「東雲草」
朝顔

和名の由来:生態が短日性で花が咲くのは「朝だけ」

漢名の由来:王の大病を朝顔の種で治して謝礼として当時財産であった牛を与えられて牽いて帰った<中国の古医書『名医別録』による>

平安遷都の頃、遣唐使がこの種子を牽牛子(薬物)として持ち帰った。


家紋について   朝顔紋を使用した家譜が見当たらないことから、
明治以降に作られたとかんがえられる。
丸に一つ朝顔


竹丸に朝顔







番外②夕顔 和名「アサガオ」 漢名「牽牛子」 別名「東雲草」

夕顔

和名の由来:夏の夕方に開いた白い花が翌日朝には萎んでしまう


夕顔は平安時代に中国から渡来


『枕草子』、『源氏物語』のなかで作品の対象となった


家紋について  下記のほかに 塩谷氏「敗れ車に夕顔」、
              南条氏「夕顔・蔓夕顔の花」がある

丸に夕顔の花
使用家 新庄氏




夕顔桐
使用家不明 『平安紋鑑』












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