2011年6月23日木曜日

リンネの紋章は違反紋章

先回リンネの紋章について概略を書きましたが、
今回はその紋章の疑問点を西洋紋章学的に述べたいと思います。
内容の一部は友人の意見を採用させていただきました。

疑問1、楯の両側の「サポート」のリンネソウの蔓の先端は昆虫か?花か?
 ・花 説:リンネソウについて見た事がなく、友人から聞いた話とネットの図鑑の知識だけですが、
そもそもリンネソウは花軸をたて2つの花を咲かせる。 
蔓の先端に1個だけの花を咲かせることなどありえないのではないでしょうか?
従って これは花ではない!
・昆虫説:するとやはり「昆虫」?
そこで飯田市在住の昆虫の専門家Sさんにお聞きしたところ
『花のように見えます.
昆虫だとしたら,蛾(マダラガ科?)かトビケラ?
結局 花、昆虫の決め手はありませんでした。
従って、独断と偏見で個人的な総括
リンネはリンネソウについて最も詳しいはずなので、蔓の先端に花をつけるはずはありませんが、デザイン的に寂しいので、花か昆虫か不明な模様をつけたのではないか?

疑問2、1762年にアドルフ・フデレリック国王の尽力により貴族に叙されました。
ところが文献で調べましたが、その爵位がわかりませんでした。
たぶん楯の3区分されたところに各1個ある冠がその爵位を表わしているはずです。
手元の資料「ヨーロッパの紋章学」を参考にすると、フランスタイプの公爵の冠のようです。
はたして貴族の爵位は?
公 候 伯 子 男 ・・やはり平民からの出なので、やはり男爵でしょうか?

疑問3.リンネの紋章はどうも違反紋章らしい。
以前にも少し話しましたが、ヨーロッパの紋章は日本の家紋と異なり、紋章制度の下紋章官により取り締まられていたそうです。

そこで今回は私が紋章官に代わってリンネの紋章を裁いてみます。
疑義・申し立てがあればメールで申し立ててください。
ここからは紋章学的に話を進めます。
そもそも楯を線で3分割(分割紋章)したものであれば、3色使っても問題ありません。
ところが 金の帯を ”置いて”(この置くということが重要な意味を持つ) あるので、
「オーディナリーズ」(すなわち本来は楯を薄い金属で補強する事からいろんな形状が採用された基本形状の1つ)であり、その場合は基盤となる楯の色は一色でなければなりません。

・・・・くどいこと言って自分でも言いたいことが簡潔に言えているのか自信がなくなってきました。
でも気を取り直して

違反紋章は過去にも例外的にはあったそうですが、スウェーデンは当時あまり厳しくなかったのかな?

2011年6月14日火曜日

リンネの紋章

スウェーデンの植物学者リンネの紋章を見つけました。

まずリンネについて簡単に述べておきます。
 ・分類学の父といわれ、その功績から貴族に列せられた。
 ・種の呼称である二名法を確立した。
   種の名称=属の名称(ラテン語名詞)+種差(ラテン語形容詞)
 ・リンネソウをこよなく愛し、学名にリンネの名前が使われている。


リンネの紋章

この紋章にはリンネが自分の研究の中で重要な物をデザインに使っています。
まず中央は卵を配置しました。
    リンネは卵を全ての生命のみなしていました。
三つに分かれているのはそれぞれ鉱物界、植物界、動物界を表わしています。
  所謂 『三界説』ですね。
 紋章の周りにはリンネの名のついた、リンネソウで縁取られています。

これをヨーロッパの紋章学の観点からその構成を見ていきましょう。
とにかく今回は日本の家紋ではなく、初挑戦でまったく自信がありません。
参考書片手に謎解きをやってみました
もし間違いの場合は教えてください。

まずクレスト(兜飾り)には彼が最も愛したリンネソウの花の部分が描かれています。
 その花の両側を取り囲むように多 肉質の植物(リューゼツラン?)を配置。

次にローブ・オブ・エステート
 楯の背後のマント状の布で、位階を示す礼装用のローブを図形化したもの。
 金色で貴族の証。(マントとは異なる)。

、 
楯の形状から時代と国籍、紋章図形を表わす。
 自信は無いがどっしり横広がりのイメージからイングランドまたはスイスタイプの変形のように 思われる。
又紋章の幾何学図形(オーディナリーズ)は3分割により、リンネの三界説をうまく表わしている。

サポーター  
これは本来 楯を支える物で、その家系によって特定の動物などが決まっている。
イギリス王の紋章には左にライオン(イングランドの象徴)、右にユニコーン(スコットランドの象徴)

 本紋章では上部から伸びたリンネソウの蔓がサポーターの位置に該当するが、
 いかにも弱弱しく、とても楯を支える役目を果たせそうにはありません。

最後にリンネソウについて
リンネソウ
・ リンネソウはつる性の木で、ハイマツの下に広がり5センチほどの花軸をもたげて、
頂上に小さなややピンクがかった白い花を2個つけます。(佐藤博士)
 ・その他ブログから引用
リンネソウは(別名エゾアリドウシ、メオトバナ)は予想に反してとても小さい。
でもピンク色の花がかたまって咲いているととてもきれいだ(白馬岳にて)


2011年6月6日月曜日

鷹の羽紋

鷹は鳥類の食物連鎖のピラミッドの頂点に君臨する王者。

鷹狩は古くから武人だけでなく公家たちの憧れの武芸であった。

又 鷹の羽は矢羽として最高の品。

必然として武家の紋章として多く採用された。

紋章としては、鷹の姿そのものは希で、圧倒的に鷹の羽を扱ったものが多かった。

近年私が生活拠点としている2都市
刈谷市と飯田市の寺院・霊園の墓石から家紋を集めて比較検討を行ったところ、
鷹の羽紋 特に「違い鷹の羽」は飯田市のほうが圧倒的に多かった。
ちなみに 飯田市では3位、刈谷市では17位でした。
飯田市で多かったのは清和源氏の小笠原氏との結びつきが大きかったことに起因したのではないだろうか?
実は飯田市伊豆木に小笠原書院(国重要文化財登録)の管理人である久保田安正編著「小笠原屋敷ものがたり」に小笠原家が用いた矢羽について詳しく書かれているのでその一部を紹介します。

弓は古来より武具として最も一般的なものであった。
戦いが終わった後には 必ず敗者の首実検が行われ、首級の確かめがあり、
誰が射止めたものか?その矢羽によって射手が判明すると褒美が与えられました。
したがって矢羽は武士の名誉につながるものとして個性的なものが用いられた。

矢羽に用いる鳥類の羽は小笠原家の文書によると
『一ニタカノ羽 二ニ真羽 三ニ山鳥 四ニトキノ羽 五ニ白鳥ノ羽』
と書かれています。
真羽とは鷲の尾羽のこと、トキは昔盛んに矢羽に使われ乱獲されていたようです。

小笠原家では格式の高い鷹の羽を用いました。
羽には斑文といって模様があり、小笠原家では53種類もの多くが使われていたようです。
その代表的なものを紹介しますと
タカウスヒャウ 大中白 小ツマグロ 妙法 蓮花 大中黒・・・等

以上 小笠原家について詳細を書きましたが
鷹の羽紋は「伝統の十大家紋」の1つでもあり、使用家も多い。

江戸時代に例をとると
広島藩主の浅野氏「芸州鷹の羽(丸に鷹の羽違い)」(羽に渦巻きがある)
芸州鷹の羽
芸州鷹の羽(丸なし)













福山藩主の阿部氏 「鷹の羽違い」(羽に斑点がある)

安部鷹の羽













赤穂事件で名高い浅野内匠頭も「播州鷹の羽(斑入り鷹の羽)」(羽に付く渦が広島の宗家とは異なる)

丸に違い鷹の羽浅野氏